おたずねポスト第5回 CRMSに聞いてみよう(No.1) ホールボディカウンタ(WBC)について

「おたずねポスト」では先日、福島市にお住まいのお母さんから、福島市で実施されたホールボディカウンタ測定結果の解釈についておたずねいただきました。これをうけて、今回は翻訳を経ずに、福島市の事情にも精通している市民測定所CRMS理事の岩田渉さんに、検査結果の読み方のポイントなどをおたずねしました。他の自治体の方々も参考にしていただければ幸いです。

 

福島市のCRMSでは食品のセシウム測定のほか、ホールボディカウンタの測定ができます。詳しい説明やお申し込み方法等はこちらをご参照ください。

 

これまでいただいたその他のおたずね事項は、翻訳編集が済み次第掲載いたしますので、しばしお待ちくださいませ。

 

測定結果の読み方について

 

Q1. 福島市で配布された「検査結果の見方」という用紙には、「今回の検査における検出限界Cs-134:

150Bq, Cs-137: 170Bq」と記載されています。これは、体重キロあたりの値ではなく、体全体の値と考えていいのでしょうか?

 

単位がBqと表示されている場合、それは/bodyを指していると考えて問題ないです。1キロあたりのBq数の表示がない場合、Bqを体重で割れば、Bq/kgになります。

Q2. 体全体のベクレル数の検出限界は、単純に足し算をして330Bqと考えていいのでしょうか?

 

通常、異なる同位体を足し合わせることはありません。原発事故後、日本政府は食品規制値をセシウム合算値で表しました。そのため、セシウムを足し合わせて考えることが一般的になっています。場合によっては、単純に足して330Bqと考えてよいと思います。気をつけていただきたいのは、Cs134のほうが Cs137に比べて与えるダメージは大きく、しかしCs134のほうは半減期が2年と短いということです。

 

発災当時に検出されたセシウム合算値1000Bqの内訳はおおよそCs134: 500Bq、Cs137: 500Bqとなりますが、事故から2年たった現在(2013年3月)のセシウム合算値1000Bqの内訳はCs134: 330Bq、Cs137: 670Bqとなります。ですから2年前の測定結果と現在の測定結果を合算値で比べることはできません。

 

Q3. 福島市で実施されたホールボディカウンタ測定は2分(120秒)でしたが、これに関してどのように思われますか?

 

立位型WBC(Fastscan)で測定されたと思いますが、2分以上、あの遮蔽環境の中でじっと立ち続けるのは難しいと思います(特に子どもは難しいでしょう)。また行政の測定は大量の人の測定に応じなければならないという理由もあるのではないかと考えます。2分間の測定は、Fastscanの測定時間としてメーカーのキャンベラがスタンダードの運用としてあげているものです。通常は原発作業員に対して使用されています。

 

Q4. ベルラド研究所では3分、CRMSでは5分で実施されているかたわら、週刊朝日の記者が30分の測定を受けたという記事もありますが、測定時間はどのようにして決められるのでしょうか。

 

ベルラドやCRMSのWBCは簡易型です。測定時間は、下限値をどこまで下げたいかということと、人がじっと座っていられる限界も考慮します。(あまり座りやすい椅子ではないことと、動いてしまうと、上手く測定できないということがあげられます)。CRMSも最初は3分間での測定を行っていましたが、受付年齢を引き上げて測定時間を5分間にして受付けています。

 

30分の測定はベッド型WBCで行われたものだと思います。遮蔽のしっかりした環境に設置された、精密測定の行えるWBCですと、20-30分で各核種20Bq/bodyくらいまで定量できるものもあります。

 

Q5. 同じメーカーのホールボディカウンタであっても、設置条件によって検出限界は変わるそうですが、例えばどのような条件によって変化しますか?

 

NaIシ ンチレーターの結晶の大きさや質も一台一台が全く同じなわけではありません。(テレビも車もボールペンも同じ製品であっても、一台一台すべて違います)。 設置条件としては、バックグラウンドの線量で検出限界は変わります。その他の条件ですと、測定時間、身長・体重によっても検出限界は変わります。(身長・ 体重は体格補正を行うソフトウェアの搭載されたWBCのみ)。

預託実効線量について

 

福島市で実施されたホールボディカウンタ測定結果の用紙には、預託実効線量が年間1mSv以下、という目安が記載されています。さらに「参考2」に、「この量を1年間摂取した場合の預託実効線量が1mSvとなる場合に、体内に存在する放射能量」として、以下の数値が挙げられています。

「成人(18歳以上) Cs-134: 約18.000Bq, Cs-137: 約29.000 Bq

13歳以上18歳未満 Cs-134: 約15.000Bq, Cs-137: 約24.000 Bq

8歳以上13歳未満 Cs-134: 約9.700Bq, Cs-137: 約14.000 Bq

4歳以上8歳未満 Cs-134:約 6.100Bq, Cs-137: 約8.500 Bq」

 

Q.1 「預託実効線量」とは何なのか、できれば数学や物理が苦手な人でも分かるように簡単にご説明いただけますでしょうか。

 

子どもは今後70年間で被ばくすると思われる線量、大人は今後50年間で被ばくすると思われる線量です。

 

例えば、Cs137が100Bq/kg含まれる食品を1kg摂取したとしましょう。

17歳以上では、最初の1か月で0.338μSv、次の1か月で0.250μSv、と被ばくしていきます。勿論この場合、50年間被ばくし続けるわけではなく、最初の1年で311.401μSv、2年目8.368μSv、3年目0.225μSv、4年目0.006μSv、それ以降は0と考えます。ご自分で計算できるサイトがあるので参考になさってください。

 

Q2. 上記の「体内に存在する放射能量」のリストに挙げられた数値に関して。

 

例えば、8歳以上13歳未満の子どもの体重が20kgだったとします。8歳以上13歳未満の子どもの放射能量として挙げられているCs-134: 約9.700Bq、Cs-137: 約14.000 Bqをそれぞれ20kgで割ると、体重1キロあたりCs-134: 約485Bq、Cs-137: 約700Bq以上測定された時点で、ようやく年間1mSvを超える計算になります。

 

預託実効線量が年間1mSvという基準についてどう思われますか? また、CRMSでは何らかの基準を参考にしていますか?

 

ICRPの線量換算係数が正しければ、この値で年間1mSvとなります。年間1mSvは、がまん値(tolerance level)とも呼ばれているもので、LNTモデル(閾値なし直線モデル)を適応すると年間で10万人に5人癌死が増えると想定される値です。ですから年間1mSv基準とは、安全であるという意味ではありません。ICRPの内部被ばくに対する考え方(線量換算係数、体内動態モデル)に対しては様々な批判があります。また年間追加被ばく限度量1mSvというのは、決して小さい値ではないと考えています。

 

CRMSはこれ以下であれば安全であるといった基準を用いません。被ばくのリスクは、被ばく量に応じて上がるため、被ばく量をできる限り少なくするべきだと考えております。 

CRMSのホールボディカウンタ測定について

 

Q1. これまでCRMSで実施されたホールボディカウンタ測定の結果を受けて、何らかの傾向はみられましたか?これまで測定された体重1キロあたりの平均値は大体どれくらいでしょうか。測定された人数に対して、汚染が検出されなかった人数の割合も分かればお知らせください。

 

傾向でいえば、小学生の子どもではほとんどNDです。検出されるのは、成人、特に高齢の男性で農業に従事されているかたから検出される割合が多いという傾向が見られます。ただし、精査が必要なので、詳細のレポートはもう少し先になります。

 

Q2. CRMSではホールボディカウンタ測定の受付を2歳以上から小学生以上と変更されたそうですが、なぜ幼児の測定をお断りすることになったので しょうか。体重が軽いからでしょうか?その他の理由もあればお知らせください。

 

現在、測定時間を5分間としていますが、5分間一人でじっと座っていることができる年齢ということで小学生(6歳以上)といたしました。しかし6歳以上であっても、5分間一人でじっと座れない場合はお断りすることがあります。それ以下のお子さんですと、同じ食事をしていれば、お母さんを測定した方が検出力があり、目安となるだろうと考えています。

 

Q3. 幼児の体内の放射線の量をさらに正確に知るには、どうしたらよいでしょうか?

 

バイオアッセイ法、尿検査をしてみるとよいかもしれません。同位体研究所では、Csとストロンチウムの検出も行っています。測定精度は信頼できます。

岩田さんからは以下のアドバイスもいただきました。

 

―内部被ばくの防護方法―

  • 風の強い日はマスクをつけることをお勧めします。
  • 食品は遠い産地のもの、あるいは 測定してより低い値のものを摂取するよう心がけた方が良いでしょう。
  • 流通食品は概ね低い値ですが、たまに高い値のものが紛れているので、やはり産地を気にした方がよいです。

―外部被ばくの防護方法―

  • 3つの基本: 汚染源から離れる、長時間過ごさない、遮蔽する
  • 避難・移住が難しい場合は、 週末保養、夏休みを利用したリフレッシュキャンプなどに参加して、積算線量を下げましょう。次のHPには有料・無料保養プログラムが色々と紹介されています。 
  • 食習慣や食材にもよりますが、現在のところ、個人被ばくの内訳は概ね、外部被ばく量のほうが大きいので(個人差があります)、子供部屋の空間線量や家のリビング ルームなど、長時間過ごす場所の空間線量を測定し、ペットボトルに水を入れて遮蔽する*、子供部屋を家の中で最も線量の低い 場所へ移すといった対策をとることをお勧めいたします。(家の2階が子供部屋であることが多く、屋根の除染が困難なことから、子供部屋の線量が一番高かった、といったケースもあります。)

 

*註 透過力の強いガンマ線を遮蔽するとき、通常は比重の高い鉛を使用して遮蔽を行いますが、応急処置として、水を入れたペットボトルを線量の高い部屋の線源の方向、壁や側溝、雨どいのある方角に置くだけで、大抵は線量が何割かは下がります。屋根が汚染していて線量が高い場合は、壁にペットボトルを並べても効果はありません。

さらに以下のおたずねにも回答いただきました。

 

「ネットなどでも家の中の放射線量を下げるためのお掃除方法などがありますが、そもそも窓を開けて喚起してもよいのでしょうか?家の庭が土なので、線量が高く、家の中に放射性物質が入ってきてしまうのではないかと不安で、ろくに喚起もしていません。ペットボトルに水を入れて遮蔽することや水拭き、まめな掃除など以外に、有効な対処法はございますか?やはり、庭の除染が一番でしょうか?」

 

  • 風があまり強くなければ、窓を開けて換気した方がよいと思います。
  • 空気中での放射性物質の動きは埃と変わりません。埃が入ってきたり、付着するのを避ける方法と同じ方法で避けることができます。
  • 屋内の線量を下げるには庭の除染が有効です。また屋根に降り積もっている放射性物質によって、2階のほうが線量の高いケースがあります。
  • 拭き掃除は放射性物質を家のなかから取り除くのに有効です。しかし、線量はほとんど変わりません。

 

岩田さん、ありがとうございました!


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