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27

Jan

2013

おたずねポスト第4回 ミシェル・フェルネックス博士へ 「IAEAとは」

昨年12月に行われた福島県とIAEAの共同開催による閣僚会議を受け、チェルノブイリと福島をつなぐおたずねポストでは、スイスバーゼル大学名誉教授のミシェル・フェルネックス博士にチェルノブイリでのIAEAの政策措置について伺いました。フェルネックス博士へご質問したいという方はページ下のコメント欄へお書き込みください。

 

ミシェル・フェルネクス博士

1929年ジュネーヴ生まれのスイス人。医学博士。熱帯地域の伝染病に関心を持ち、アフリカ奥地での僻地医療に志願して、マリ・ザイール・タン ザニアなどで仕事をした。マラリア・フィラリアによる感染症の専門家。WHOの専門委員を15年間つとめている間に、チェルノブイリ原発事故が発 生。WHOが健康被害に立ち向かうと期待したが、逆に事態を隠ぺいしたことから、WHOとIAEAとの癒着関係を見いだし、世に訴えた。

 

IPPNW(核戦争防止国際医師会議)スイスの元会長。フランス緑の党の創設にも関わった故ソランジュ・フェルネクス夫人、ベラルーシ・ベルラ ド研究所創設者の故ワシリー・ネステレンコ博士、「真実はどこに?ーWHOとIAEA、放射能汚染を巡って」のウラジミール・チェルトコフ監督ら とNPO「チェルノブイリ・ ベラルーシの子どもたち」(ETB)を2001年に創設。2007年からは「WHO独立を求める会」(IndependentWHO)を組織する。 IAEAのチェルノブイリ原発事故の過小評価を批判した『終わりのない惨劇―チェルノブイリの教訓から』(緑風出版、竹内雅文訳)共著。福島第一 原発事故を受けて、福島をはじめ日本各地を訪問して医師の立場から提言をしたり、双葉町の井戸川町長や福島集団疎開裁判 のジュネーブ国連訪問に付き添うなど、被災者への支援を続けている。

 

Q1、IAEAとは?

1956年、国連は世界中の国々で原子力産業を振興するための組織を必要としました。また、アメリカ合衆国大統領は、核兵器の保有をアメリカ、ソ連邦、イギリス、中国とフランスの5カ国に制限することを望みました。この特権の代償として、核不拡散に賛同した国々に「平和のための原子力」の追求を許しました。こうして、米ソ英中仏5カ国の安保理常任理事国のみに従属するIAEA(国際原子力機関)が国連によって作られ、国連のヒエラルキーの頂点に置かれました。

 

IAEAの規約によれば、この機関の主な目的は「全世界における平和、保健および繁栄に対する原子力の貢献を促進」すること、とあります。言い換えればIAEAは、核保有5カ国が、できるだけ多くの原子力発電所を、世界中のあらゆる国々に売る機会ないしは義務があるをもつという、壮大な商業プロジェクトの推進機関となったのです。結局のところ、IAEAは核保有5カ国に支えられたビジネスロビーでした。

このロビーは原子力発電所の普及を妨げるような過酷事故を嫌います。事故発生の際には、 IAEAは即座にやって来て、大したことはない、住民にはほとんど危険がない、と説明します。住民は少しのあいだ家で待機するだけで、すべての問題はじきに解決するでしょう。放射能は人体に影響はありません、放射能をおそれることが有害なのです、といった調子です。行政はこの方針に従い、危険を過小評価し、IAEAの言われるままに嘘をつかなければなりません。

 

Q2, 1986年のチェルノブイリ原発事故を受けてIAEAが採った政策措置はどのようなものでしたか。

 

事故の後、IAEAはすぐにチェルノブイリにやってきました。WHOから派遣されたペルラン教授と共に、IAEAは原子力産業で働く専門の作業員のために設定された外部被ばくの制限値を変え、住民にも適用することを提案しました。汚染地域に住む家族らが、じきに外部被ばくより内部被ばくに苦しむことになることを無視したのです。ソ連邦は年間5ミリシーベルトの制限値を10ミリや20ミリに増やすことを拒みました。そんなことをすれば、住民の避難は遅れ、放射能汚染を原因とする病気のリスクはさらに増えていたでしょう。チェルノブイリの経験によれば、放射能汚染による様々な疾病がある中で、ガンのリスクはほんの一部なのです。

 

IAEAは、WHOのベイバーストック医師の奨励していた安定ヨウ素剤の子どもたちへの配布に、積極的ではありませんでした。危険の高い地域の人々の避難を急がず、高線量被ばくに達するまで待っていました。また、人々の直面する危険を過小評価し、独立した調査を行わないように保健省に経済的な圧力をかけました。

 

フランスのロビー団体は、今回の福島ほど早期にはきませんでした。ロシャール氏が率いるNGO団体CEPN(放射線防護評価センター)です。このセンターは、56基の原発を持つフランス電力会社、フランス製原子爆弾を開発したCEA(原子力庁)、そして原発を製造し、ラ・アーグ再処理工場に核廃棄物を貯蔵し、ウラニウム、プルトニウム、MOX燃料を販売しているアレバ社を代表しています。

 

IAEAは国連組織の頂点に鎮座しています。他の機関はIAEAに従わなければなりません。FAO国連食糧農業機関でさえも、食品基準値を決める際にはIAEAに同調しなければなりません。IAEAの目的は、原子力発電所のさらなる販売促進のために、大惨事の後始末の費用とチェルノブイリの衝撃を軽減させることです。

 

1987年9月、IAEA がウィーンで開催した第2回チェルノブイリ会議で、暫定報告が決定・公表されました。このまとめでは、急性被ばくによる数十人の死亡という既に発表済みの数が報告されたのに加え、死に至るガン患者は数年後には4千人になるだろうと予測を出しています。

 

2003年から2005年にかけて、一連の国連機関と、チェルノブイリ事故の被害を最も受けたベラルーシ、ロシア、ウクライナの3国が共同で、この惨事の報告書の完全版を作成するために、チェルノブイリ・フォーラムを開催しました。この報告書は2005年に国連諸機関によって複数の編集版で公表されました。WHOが作った医療の章では、1987年の会議で提出された予測値が確定され、急性被ばくによる死者は約50数人とされました。

 

1996年には子どもの甲状腺ガンがようやく認められましたが、このガンの予防と治療は「容易」です。疾病や死亡の原因は、放射線への恐れ、つまり放射線恐怖症だとされました。IAEAにとっては内部被ばくの重要性はわずかであり、先天的異常は放射線との関係を証明するのは困難なのです。

 

Q3, IAEAの措置がチェルノブイリ地域の人々にもたらした影響とは何でしょうか。

 

ソ連邦が終焉し、ロシア、ウクライナ、ベラルーシが取って代わったことにより、IAEAの影響も変化していきました。比較的汚染が少なかった国はウクライナでしたが、この国は例えば2007年4月25日に、フランスのメディアやフランス政府に向けて、人々の健康状態に関する以下のような定期報告をしました。

 

「1986年に、わが国は国土の7%が汚染され、子ども130万人を含む住民350万人が深刻な被ばくを受けました。2005年1月の段階では、294万9106人の市民が被害者として認定されています。放射能に汚染された地域の84.75%の人々は病気です。また、避難した16万人のうち、89.96%は病気です。2004年、事故処理作業者(ウクライナから15万人)のうち、94.2%は病気で、大多数は体が不自由です。」

 

隣国のロシアとベラルーシの被害者はより多いのですが、両国の全体的な報告はなかなか手に入りません。80万人の事故処理作業者は現在のロシア共和国とシベリアで募集されましたが、彼らもまた同じような問題を抱えているはずです。

 

IAEAはあくまでも国際権威、原子力産業の推進機関、原子力発電所を販売する核保有5大国に支持された中心的な国際ロビーの地位にとどまります。もっと低いレベルでは、低いレベルといってもずいぶん危険なのですが、ロシャール氏が主催するCEPN(放射線防護評価センター)があります。彼が指揮したプロジェクトであるエートスは、チェルノブイリで失敗しました。子ども達たちの体調は悪化し、深刻な病気が増えたのです。エートスの最終報告書では、小児科医の医学レポートは検閲されました。子ども達たちの健康状態の悪化を示す内容だったからです。

 

Q4, IAEAの政策に対応するうえで、福島の人々にどのような提案をしますか。

 

日本には最高峰の医学関係の教育研究機関があると世界では認められています。2012年のノーベル医学・生理学賞受賞者は日本から出ました。ですから、私たちは独立性と真実の追究が再び日本で実現するように願っています。現在福島では、原子力ロビーによって選ばれた御用専門家が活動を指揮し、非倫理的で政治的な、見せかけだけの取り組みをやろうとしています。

 

市民、被害を受けた人々は、独立した立場にある医学の助けが再度必要です。医療は、福島および近隣の一部の汚染された県の現状の問題を扱う、嘘のない科学的調査によって立つべきです。

 

住民は放射能に汚染されていない食物を要求するべきです。ヨーロッパで最も貧しいベラルーシですら、放射能汚染の強い地域の学校で、汚染されていない給食を無料で配給したのです。およそ8年経って政府は変わり、現在の大統領がこうした貴重な補助を打ち切って以来、健康被害は増加しました。

 

ところで、チェルノブイリから100キロ離れたストリン地方で行われたエートス・プロジェクトは、この地方の小児科医の報告にあるとおり、子ども達の健康に悲惨な結果をもたらしました。そのため、ジャック・ロシャール氏が作成したエートスの最終報告書では、医療の章は削除されたのです。あらゆる健康に関する指標が深刻な悪化を示していることがその唯一の理由でした。

 

「インフォームド・コンセント」をはじめとする、医療調査において尊重されるべき倫理的ルールを、法律家は知っています。その法律は第二次世界大戦直後できたニュルンベルク綱領*に基づくものであり、同綱領は新たにヘルシンキ宣言**として採択されています。

(訳注)*1947年に、ニュルンベルク裁判の結果として提示された、研究目的の医療行為(臨床試験及び臨床研究)を行うにあたって厳守すべき10項目の基本原則。

**ニュルンベルク綱領を受けて、1964年、フィンランドの首都ヘルシンキにおいて開かれた世界医師会第18回総会で採択された、医学研究者が自らを規制する為に採択された人体実験に対する倫理規範。

 

甲状腺の疾患をめぐる大規模な調査の際には、試験の目的、すべての検査の内容とその科学的な目的について、対象となる家庭は十分に情報を得ていなければなりません。対象者は、いったん合意した場合でも、理由なく協力を中断する権利があります。

 

現在着手されているものは治療ではありません。多くの子ども達に必要なのは治療なのです。親御さん、お母さん方は、小児科医を選び、子ども達を診てもらえるようにする必要があります。この分野では、住民が行動し、発言し、(放射能から福島の子どもを守ろうとする弁護士などの支援があれば)違法だと思うことを公表することができるでしょう。

 

医師は目覚めなければなりません。今こそ勇気を持ち、低線量被ばくの影響の研究に着手しなければなりません。論文を読み、医師として行動してください。

 

(IAEA 職員に請願書を手渡し、自分たちの土地に入らないよう求める福島の女たちの写真を見ながら)この写真には女性たちの勇気が現れています。これこそ、現在と将来のあなた方の国の力です。

 

ミシェル・フェルネックス博士 スイスバーゼル大学

2012年12月15日、郡山市ビッグパレットふくしま
2012年12月15日、郡山市ビッグパレットふくしま

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バーゼル大学名誉教授ミシェル・フェルネックス博士への質問を募集しています。ページ下のコメント欄から、ご質問をお書きください。質問を書くときの 注意点として、お住まいの地域(県・市・町)をお書きください。集められた質問は子どもたちを放射能から守る世界ネットワークスタッフによって翻訳され、 フェルネックス博士へ送られます。福島県内をはじめとする、放射能汚染の高い地域に住むお母さんやお父さんからの質問を優先的に翻訳させて頂きたいと考えて おりますので、お住まいの地域が書かれていない質問は翻訳する順番が後になってしまいますことをご理解いただけるようお願いいたします。

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