おたずねポスト第2回 ベルラド研究所アレクセイ・ネステレンコ所長へ

Aさん、福島市から京都府へ避難、子ども1人、子ども福島ネット保養班

 

福島では、長期の保養はどうしても夏休み期間に限られます。そこで、移動教室=ローテーション保養として、クラス単位での保養を実現すべく考えています。しかし一方、放射線との関係を出すと、学校レベルでの取り組みは動きにくくなりかねません。20msv/y、100bq/kgの世界ですから、現状が危険だと言うと風評被害につながる!と言われてしまいます。このことから、生物学的半減期は心の底で考えながらの対応となるかもしれません。

 

Q1. 現在も保養に出ている子どもたちの、参加前と参加後の内部被ばく量変化は確認しているでしょうか?

 

はい。2012年に日本で実施さ れたベラルーシの子ども達の保養プログラムでは、最も効果があった子どもの体内で1か月半でおよそ80%のセシウム137の減少がありました。平均すると、ビタペクトの摂取の効果も含め、1ヶ月で35~40%の減少が見られます。

 

Q2. ホールボディーカウンターによるもですか?あるいは、尿検査、血液検査によるものですか?

 

ホールボディーカウンターです。

Q3. 期間(保養日数、前後検査の期間=何日置いて測ったか)、検査内容別に教えていただければ嬉しいです。

 

Q4. いわゆる、生物学的半減期が、どう把握されているのか?保養プログラムの継続的実施の根拠になりうる=説明資料となるデータが欲しいのです。

 

この二つの問いについては、以下の資料をご参照ください。

ベラルーシ•チェルノブイリ地区の子どもたちの国内・海外における保養の有効性の比較
保養の有効性.pdf
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Q5. また、その参加児童が暮らしている場所の空間線量、土壌汚染の具合もデータとして整合性が取れていれば更に参考になると思います。

 

放射線量のレベルは様々で す。土壌の汚染度は185-555 kBq/m2、現在の空間放射線量は通常毎時0.5マイクロシーベルト以下、セシウム137の平均放射線強度は50~5000Bq/kgです。

Bさん、アメリカ在住、福島市、郡山市、白河市、西郷村に家族がいる

 

Q6. ベルラド研究所が成り立った経緯など、当時の政治状況を交えて教えていただけますでしょうか。

 

ベルラド研究所は、私の父ワシリー・ネステレンコ(1934年12月2日ー2008年8月25日)によって創設されました。父はベラルーシの物理学者で、ベラルーシ科学院の核エネルギー研究所の所長でした。父はウクライナのLuhansk州、 Krasny Kut村で生まれ、バウマンモスクワ国立工科大学で学位を取得し、チェルノブイリ事故後はその影響の問題に携わってきました。

1989年にアンドレイ・サハロフ、アレス・アダモヴィッチ、アナトリー・カルポフの援助を受けてベラルーシの独立機関であるベラルド研究所を創設し、1990年より所長を勤めてきました。

ベルラド研究所の活動が理由で父は核エネルギー研究所所長の職を失い、ベラルーシ国家公安局に睨まれ、精神病棟に収容すると脅されてきました。しかし、後になって、ベラルーシ政府は「チェルノブイリに関する研究は今後一切しないという条件」で国立研究所への再就職を提案し、父を懐柔しようとしました。また、父は二度暗殺を免れました。

父ネステレンコはチェルノブイリ事故発生を知った直後から行動を開始しました。原子力の専門家として、また消防士としての経験から、燃える原子炉にヘリコプターから液体窒素を投下したのです。この作業のために、父は放射性の煙の最中に突入しなければなりませんでした。高度の放射能汚染にも関わらず、ネステレンコは生き残りました。しかしヘリコプターの4人の乗組員のうち3人は被ばくによって死亡しました。

ベルラド研究所は、チェルノブイリ地域の住民と現地の食品の放射線測定や、放射性物質に汚染された地域に住む人々の放射線防護や安全管理対策の開発を行っています。これらの活動は、しかるべき科学的研究を経て、その研究結果を活用し、発展・組織することによって実施されています。

 

ベルラド研究所の科学的活動の主な方針として、以下が挙げられます。

  • 子ども達の体内に蓄積したセシウム137のホールボディカウンター(WBC)測定と、ペクチン飲料による子ども達の被ばく防護。
  • 食材の放射線測定センターの地域ネットワークを作り、放射能の危険性を住民に示す。
  • ベラルーシの放射線業務のための放射線量計や食材の放射線測定器の開発と製造。
  • ペクチン補助食品「ビタペクト」の生産。
  • チェルノブイリ地域で、子どもの放射線防護や放射線生態学について教師と親が学ぶ教育センターを組織。

 

1990年よりベルラド研究所は、チェルノブイリの影響を克服するための国家委員会の資金援助を受けて、地域の学校や消防署を拠点に地域放射線測定センター (LCRC : Local Centers of the Radiation Control)を設置し、食材のセシウム137含有量を測定しています。これらのセンターは、ゴメリ(Gomel) 、 ブレスト(Brest)、モギリョフ(Mogliyov)、ミンスク(Minsk)地域でチェルノブイリ事故によって影響を受けた広範囲の村々に設置されました。現在、ベラルーシでは83箇所の LCRC があり、そのうち23箇所はドイツの人道援助によって資金が賄われています。ベルラド研究所のコンピューターデータベースには、32万件を超える食材放射線測定の結果が保管されています。子ども達を初めてホールボディカウンターで測定する際、子ども達の体内に蓄積された放射性核種を見極めるために、国の許容値を超えるセシウム137が食糧に含まれていると立証することが必要です。

 

ベルラド研究所が設置したホールボディカウンター研究室は、ベラルーシ共和国の研究施設認証システム(認定番号No. BY/112 02.1.0.0385)により、独立性と技術的能力が認証されています。7台の高性能SCRINNER-3М機およびラボラトリーがついたマイクロバスは、ドイツとアイルランド、アメリカ、ノルウェイの慈善団体の寄付によって購入されました。私たちはベラルーシのチェルノブイリゾーンの学校や幼稚園に出向いて、ホールボディカウンターによる子どもたちの測定を行っています。

 

1996年から2001年にかけて、ベルラド研究所はゴメリ、モギリョフ、ミンスク、グロドノ(Grodno)、ヴィーツェプスク(Vitebsk)地区の12万5千人以上の子どもたちをホールボディカウンターで測定してきました。子どもたちの測定結果は、放射能防御の実現のために保健省と自治体に提供されます。体内の放射性核種の蓄積度の高い子どもたちのリストは、ベラルーシ、アイルランド、ドイツ、フランス、アメリカ、オーストリアの慈善団体に提示され、保養グループに加えられます。

 

2000年4月より、ベルラド研究所は保健省の認可を受けて補助食品「ビタペクト」の生産を始めました。「ビタペクト」は、りんごに含まれるペクチンを素に、さらに7種のビタミンと4種の微量元素を加えたもので、フランスやウクライナで生産される同種の製品より安価です。体内に蓄積した放射性物質や重金属を効果的に吸着し、体外に排出します。

 

2001 年6月、フランスの医師らと共に、欧州基準に基づいた二重盲検法で「ビタペクト」の効率を調査しました。21日間の摂取の結果、2グ ループそれぞれ32人の子どもの体内に蓄積したセシウム137は、プラシーボ(偽薬)を摂取したグループでは14%減少したのに対 し、「ビタペクト」 では平均で66%減少しました。訳注:この治験結果は医学専門誌スイスメディカルウィークリーに掲載されています。和訳はこちら

 

このような情報に興味を持たれた方、食材の測定やホールボディカウンター測定をご希望の方は、ベラルド研究 所へご連絡のうえ来所ください。

 

ベルラド研究所 アレクセイ・ネステレンコ

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質問を募集しています

 

ベラルーシで活動を続けるアレクセイ・ネステレンコ所長への質問を募集しています。ページ下のコメント欄から、ご質問をお書きください。質問を書くときの注意点として、お住まいの地域(県・市・町)をお書きください。集められた質問は子どもたちを放射能から守る世界ネットワークスタッフによって翻訳され、ネステレンコ所長へ送られます。福島県内をはじめとする、放射能汚染の高い地域に住むお母さんやお父さんからの質問を優先的に翻訳させて頂きたいと考えておりますので、お住まいの地域が書かれていない質問は翻訳する順番が後になってしまいますことをご理解いただけるようお願いいたします。

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Comments: 1
  • #1

    Mie (Thursday, 11 April 2013 07:04)

    大変すばらしい企画だと思います。アメリカには実は福島以上の内部被曝が進んでいる場所があります。
    Defenders of the Black Hills
    http://www.defendblackhills.org/
    アメリカでも内部被曝を情報を共有できたらと思います。この英語のサイトはありますか。ぜひよろしくお願いいたします。